古市憲寿氏の名を世に広めたベストセラー本「絶望の国の幸福な若者たち」が文庫本化され、お求めやすくなったとともに、4年前の統計調査から最新版の統計調査が新たに加わり、さらに章ごとに追記されたので、紹介します。
若者の幸福度はここ4年で約70%から約80%に上昇
現代の若者の生活満足度や幸福度は、ここ40年間の中で一番高いことが様々な調査から明らかになっている。例えば、内閣府の「国民生活に関する世論調査」によれば、2010年の時点で20代の70.5%が現在の生活に「満足」していると答えている。
※追記:その後、生活満足度はさらに上昇し、2015年の調査では20代の79.3%が現在の生活に「満足」していると答えている。
タイトルにもある通り、この本は、若者の多くは非正規雇用者で、大学卒業者の内定率も低く、高齢化がますます進む不遇の状況であるのに、幸福度が他の全世代と比較して一番高いということを統計調査を元に論述されており、非常に説得力があり、衝撃的です。
そしてなんと、それから4年経った現在においては、追記にもある通り、7割から8割へと20代の生活満足度がさらに上昇していると内閣府により発表されているというのです。
これは当事者である僕の立場から言わせてもらえば、確かに昭和のおじさんたちからすると、今の若者は不幸せな境遇にあると思われる要素は沢山あります。しかし、様々な物や情報が低コストで手に入れることができる今、幸せでいい時代だよなあというのが正直なところです。
若者の幸福度が高いのは将来に希望がないから?
自分たちの目の前に広がるのは、ただの「終わりなき日常」だ。だからこそ、「今は幸せだ」と言うことができる。つまり、人は将来に「希望」をなくした時、「幸せ」になることができるのだ。
幸せな若者の正体は、「コンサマトリー」という用語で説明することもできる。コンサマトリーというのは自己充足的という意味で、「今、ここ」の身近な幸せを大事にする感性のことだと思ってくればいいい。
何らかの目的達成のために邁進するのではなくて、仲間たちとのんびりと自分の生活を楽しむ生き方と言い換えてもいい。つまり「より幸せ」なことを想定した未来のために生きるのではなくて、「今、とても幸せ」と感じられる若者の増加が、「幸せな若者」の正体なのではないだろうか。
古市憲寿氏は、若者の幸福度が高いことを上記の説が有力だと考察しています。正直この説は僕にはピンときません。というのも、今の自分は将来に希望があり、その希望に向けて頑張っている点が幸福度に大きく関係していると感じているからです。
逆に将来に希望をなくしたら、それこそ絶望で、不幸せに思えます。確かに客観的にみれば、若者は悪い境遇に置かれているのですが、その中でも仕事なり人生なりに希望はあり、それに向けて頑張っている、かつ環境が整っている現状に満足している、と僕には思えてならないのです。
高齢世代と若者世代の世代間格差は一億円
日本の社会保障制度(年金、医療、介護)は基本的に、現役世代が保険料や税金を払って、その時の高齢者を支える賦課方式を採用している。(中略)
年金と医療など公的部分に通じた受益と負担の関係は、60歳以上世代は6500万円トクをするが、20歳未満世代は約5200万円の負担超となるという。孫世代は祖父世代よりも一億円損しているというのだ。(内閣府が2005年に発表した「経済財政白書」による試算。)
追記:最新の試算によれば、2020年には2人で1人の高齢者を支える時代になる(内閣府「平成27年版高齢社会白書」)。
個人的に驚いたのは、日本の社会保障制度が高齢世代と若者世代で1億円も格差が生じているという点です。
よく少子化はヤバいと言われていますが、高齢者を2人で1人支えなくてはならず、その高齢者に比べると1億円も格差があると活字で表されると、筆舌に尽くしがたいものがありますよね。
しかし、これが幸福度に影響されているかというと、疑問です。というのも、いまいちピンとこないのが正直なところだからです。
未婚者の7〜8割はパラサイトシングル
18歳から34歳の未婚者のうち、男性の7割、女性の約8割は親と同居している。
これもまた衝撃的な数字でした。え、そんなに親と同居している人いるの?と思った人は僕だけではないはずです。というのも、都内に一人で住んでいる自分がマジョリティーだと思っていたからです。周囲をみても、地方から上京してきた人が多かったりするので、自分一人の収入で生きていくしかないからです。
いくら地方都市が発達し、若者たちの「地元化」を可能にしたとはいえ、親世代にパラサイトしている若者がこんなにも多いとは思いませんでした。
若者で恋人がいる割合は3割程度
国立社会保障・人口問題研究所の実施している調査によれば、18歳から34歳の未婚者のうち、異性の恋人がいる割合は男性で27.2%、女性で36.7%に過ぎない。(中略)
20歳から24歳男性の童貞率は33.6%、女性処女率は36.3%。25歳から29歳では男性が23.2%、女性が25.1%。異性との経験がない人は、ちっともマイノリティーではないのだ。
これも何気に衝撃でした。あれだけSNSでリア充、そして街ナカでカップルを見かけるというのに、3割程度しかいないのです。20代後半でも男女ともに性行為をしたことがない人は、4人に1人というのは、女性の方が多いことが意外でした。
古市憲寿著「絶望の国の幸福な若者たち」が想像以上に衝撃本
この本は本当に衝撃作で、話題になったのがよくわかります。どれもインターネットや書籍で発表されている統計調査の結果だったりするのですが、意外にも知らないことが沢山ありました。
この本が出版されたのは、3.11の後の就職難で超就職氷河期の時代で、その中で若者の幸福度が一番高いという結果は、当時の状況を考えてみると、特におじさんおばさんたちの立場からしたら、本当に衝撃的だったと思います。
しかし、あれから4年が経ち、アベノミクスの影響か2年連続で景気が上向き、スマートフォンやTwitter、Facebook、そしてLINEやAmazonなどが急速に普及している2015年にこの本を読んでみると、幸福度に関してはそれほど衝撃を受けませんでした。
世代間格差1億円、未婚者の7〜8割が親と同居、若者の恋人保有率が3割
それよりも、高齢世代と若者世代の世代間格差が1億円だったり、未婚者の7〜8割が親と同居だったり、若者の恋人保有率が3割だったりする点に驚きました。
名前は聞いたことあるけど、Amazonや書評をみて満足してしまい、購入に至らなかったのですが、読んでみたら色々と発見があり、それでいて文庫本価格なので、非常にコスパがいい本で満足でした。(なにげに補章の俳優佐藤健との対談もよかった)
皆さんの中でも気にはなっているけど、まだ読んではいなかったという方は、文庫本化され、大改訂し、最新版の統計調査が追記され、パワーアップしたこの機会に、ぜひ一読してみると発見があると思いますよ。