社会派ブロガーとして有名なちきりんさんの新著「自分の時間を取り戻そう」が出版されました。この本は「自分のアタマで考えよう」「マーケット感覚を身につけよう」に続くシリーズの3冊目です。
本シリーズでは一貫して「今後の社会を生きていくために、そして人生を楽しむために、私たち全員が身につけるべき根幹の能力とはなになのか」というテーマを扱っており、当ブログのテーマと同じですので、紹介します。
私たち全員が身につけるべき「根幹の能力」とはなになのか
私が本シリーズで提示し続けているのは、社会の進んで行く方向性を見極め、自分の時間を世間の目や会社の論理から取り戻すために必須となる「自分の人生を生きる力」「オリジナルの人生を楽しむ力」を構成する現代社会のサバイバル能力なのです。
多くの日本人は「一流大学→一流企業」、もしくは「資格を得る」といったものが現代社会を生き抜くために必要なものと考えており、それを必死に身に付けようとしています。
しかし、ちきりんさんはそれを真っ向から否定し、「現代社会に必要な能力って本当にそれ?」、「自分のアタマで考えた?」と問うのです。つい先日、Twitterでも大学時代の過ごし方について、こんなつぶやきをしていました。
あたしは大学時代、つまらない授業をほっぽってアルバイトに精を出し社会勉強をし、そのお金で海外放浪して世界を知った。学生時代という時間の使い方の生産性は、すべての授業に出る生活より圧倒的に高かった。「さぼらず授業にでるのが良いこと」と思ってる人、それって本当に自分のアタマで考えた?
— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2016年11月28日
このつぶやきは僕が当日にリツイートした際は「500弱」くらいだったのですが、今では「2万以上」もリツイートされています。ちきりんさんの主張は多くの日本人にとって大変反感を買うようで、上記のつぶやきへの反感リプも「1万以上」もリツイートされる大炎上ですw
授業がつまらないと感じているのは入った学部・学科を間違えたか、本人の能力が低く面白いと思えるまで理解できていないかのどちらかであることが多い。
自分ならこんなこと恥ずかしくて言えない。 pic.twitter.com/v3BXuB5cYg— いくた♥️なお/2日目東H18a (@ikutana) 2016年11月29日
しかし、本当にちきりんさんの主張はそこまで反感を買うものなのでしょうか?ちきりんの仰っていることを引用しながら、紐解いていきましょう。
ちきりんが語る「生産性」とは?
生産性とは「時間やお金など有限で貴重な資源」と「手に入れたいもの=成果」の比率のことです。(中略)「生産性が上がる」とは、あらゆる資源の活用度合いが高まること、あらゆる資源が、今までより有効に使われ始めることを意味しています。
そもそも、ちきりんさんが頻りに語る生産性とはなんなのでしょうか。その問いの答えが【「時間やお金など有限で貴重な資源」と「手に入れたいもの=成果」の比率】です。
これは多くの日本人が認識できていないのではないでしょうか。できるだけ偏差値の高い大学に入学し、できるだけ大きい安定した企業に入社して働くことを多くの日本人が目指しています。
しかし、それは多くの人にとって、本当に手に入れたいものなのでしょうか?恐らくほとんどの人は違うでしょう。多くの人は、世間や周囲の目、親の期待に沿ってそういう生き方をしているに過ぎません。
そして、実際に安定した企業に入ると、念願の安定(リストラ・倒産の可能性は大いにあります)と引き換えにパワハラ・セクハラ、クソ上司からの理不尽な要求に耐え、ストレスを抱えながらも仕方なく生活のために嫌々仕事をやっている、これが多くの会社員の現状なのではないでしょうか。
学校の生産性が低すぎる問題
時間もお金も有限かつ貴重なので、十分に報われると思えることに使いたい=お金や時間の生産性を最大限に高めたい。そう考えたとき、学びの場として今の学校の生産性はあまりにも低く見えます。 最大の理由は、個々人の理解レベルにまったく合わないペースで教えられているからでしょう。(中略)
お金に余裕のある家庭が、生産性の低い学校に多額の授業料を払うのはともかく、借金までしてあんな生産性の低い教育サービスを買わなければならないなんて、本当に馬鹿げたことです。
まず、日本の大きな問題は、学校の生産性です。もう本当に低すぎます。これはちきりんさんだけではなく、生産性の重要性を理解されている多くの見識者たち、具体的には堀江貴文さんや茂木健一郎さんがよく口酸っぱく主張していることですよね。
参考:堀江貴文・独占インタビュー「大学に行くのはお金と時間のムダ」
参考:茂木健一郎氏「客観的に言って、日本の大学はオワコン」自分で学びをコントロールすることが必要
僕の実体験からも、大学は大失敗でした。正直、大学の授業で得たものより、インターネットや書籍で得たものの方が、僕の人生に大きな学びを与えてくれました。僕が大学を卒業して得たものは、「750万円程の借金(奨学金650万程+親戚から入学金100万)」を抱えるにしては非常に生産性の低いものでした。
そもそも今の若者たちは、動画共有サービスを利用すれば、いくらでも一流大学の講義なんて受講できるので、大学の価値なんて有名大学のブランド力以外は、ほとんど無に等しくなっています。
下記は東京大学公式の動画配信Webサイトです。超生産性高い!
税金の生産性が低すぎる問題
グーグルが1000億円を自分たちで人工知能やゲノム解析や自動運転車の研究開発に使うのと、アメリカ政府に納税して無人攻撃機や爆弾代として使われたり、日本政府に納めて地域再生の資金としてバラまかれたりすることを比べたら、お金という資源の生産性はどちらが高いでしょう?
よくGoogleやAmazonが税金を納めていないと批判されているのを見かけます。でも、国家にお金を納めるよりも、GoogleやAmazonにお金を納めた方がよっぽど生産性が高いです。
そもそも世の中を快適にしてくれているのは、いまや国家よりも企業です。私たちの生活は、GoogleやAppleやAmazonやFacebookやTwitterやLINE、UNIQLOやZOZOTOWNといった企業によって、驚くほどに快適になりました。皆さんご存知の通りですよね。
これからの時代は国家ではなく、企業が時代を動かすのです。正直、投票する生産性も低いです。投票するよりも「保育園落ちた日本死ね!!!」とはてなの匿名ダイアリーを書いた方がよっぽど生産性が高いです。ちなみに、ちょっぴりスパイスを加えるのがポイントです。
言葉は文脈をともなって初めて意味を持つ。「保育園落ちた日本死ね」が話題になった時、「日本死ねなんてけしからん」という批判よりも、共感が多かったのは、「日本死ね」という言葉ではなく、あのブログが多くの人に読まれたから。あのブログも読まずに「日本死ねなんてけしからん」と言われても。
— 古市憲寿 (@poe1985) 2016年12月2日
生産性の高いストレス発散方法
ストレス発散の生産性にもっとも影響を与える要素が、 「使ったお金の額なのか」 「買ったモノの数なのか」 「買ったモノの種類なのか」 と考えるのです。(中略)「今、自分が手に入れたいモノを手に入れるための、もっとも生産性の高い方法はなんなのか?」と問い続けていれば、なにをするにも生産性がどんどん高くなります。
生産性をもととした行動様式を身に付けると、ストレスも効率的に発散できるようになります。女性はストレス発散方法が「買い物」という方が多いですが、「何がストレス解消になっているのか?」を考えるのは非常に大切な思考法ですね。
超大事!というのも、僕の母親が家族に内緒で数十社の消費者金融から借金をして、洋服や宝石やエステなどを買い漁ってストレス発散していた、という過去があるからです。そのため、僕は極貧生活を強いられました。高校時代は部活に入らず、ひたすらバイトしていましたね。
ストレス発散方法は、一歩間違えると人生をドン底に陥れる大変恐ろしいものにもなりますので、ぜひ皆さんは「ストレス発散の生産性にもっとも影響を与える要素はなになのか」を心得て置きましょう。じゃないと毎日借金取りに追われる日々を送ります。。
生産性の高いやりたいことの見つけ方
ひとつのことに集中せず、脈絡なくいろいろなことに首を突っ込む人について、「生産性が低い」と考える人がいますが、それは誤解です。生産性とは集中度のことではありません。生産性とはあくまで「自分が手に入れたいもの」をいかに少ない投入資源で手に入れられたか、という指標です。(中略)
多くのことに手を出し、その大半を数年でやめてしまう人のことを「なにをやっても中途半端な人」などと批判する人がいますが、私はこのスタイルのなにが悪いのかわかりません。こういう人は、自分の貴重な時間を学びの生産性が極めて高いフェーズにのみ投入している、とても合理的な人です。
日本では、ひとつのことに集中せずに、すぐにあれこれとやっていることを変えることを、続かない人扱いして批判する人がいます。これは本当に意味がわかりません。
一点突破は、沢山の経験をして「自分の適性」をしっかり理解した上でするからこそ、効果が表れるのです。例えば、ジャニーズ事務所に所属している彼らが、全く容姿と関係がない仕事に就くのは、あまり賢い選択ではありませんよね?彼らはその容姿を活かしたアイドルという仕事だからこそ価値があるのです。
逆に、ボクシング世界チャンピオンの亀田興毅選手が、ジャニーズ事務所への所属を志して、毎日のように親父さんと歌とダンスのトレーニングに励んでいたらどう思いますか?つまりはそういうことなのです。
また、世の中には外交的な人と内向的な人に分かれます。自分自身がどちらなのかを認識していないと、ストレスを抱えながら人生を過ごすことになるので、これは人生の早い段階で認識しておきましょう。
生産性を高めすぎて仕事早く終わる問題
ひとりで生産性を上げていけばいいんです。上司や組織が評価してくれなくても問題ありません。今やリストラも転職も珍しくない時代です。生産性を上げておけば、万が一のときにも労働市場での評価が高くなり、転職しやすくなります。私なら生産性の概念も理解していないバカな上司など無視して、どんどん生産性を上げていきたいです。
生産性を高めすぎても、「仕事を沢山振られるだけでは?」と定時退社が当たり前でない日本の多くの会社員は疑問に思うみたいです。しかし、これは全く問題ありませんとちきりんさんは一喝します。
確かに生産性が高い人に仕事が集中します。しかし、それでいいのです。なぜなら、生産性を極限まで高めることで、あなたの市場価値は非常に高くなるからです。これを認識していない人は、一生同じ会社に勤める時代錯誤な考え方をお持ちの方なのでしょう。
どんなに仕事が集中しようと、生産性を高めれば後々は確実にペイします。しかしこれが、一生同じ会社に勤め続ける考え方の場合、そこまでインセンティブが働かないので、日本の会社は諸外国に比べて生産性が低いままなのです。
勝間和代氏が実行した仕事の減らし方
・効率的なやり方を考え
・そのやり方について、直属の部長を巻き込んで相手の部署と交渉をしてもらい
・最終的に新しいやり方を採用してもらうということを毎日、くり返しました。例えば、当時、1日何回も電話で金利を聞かれて口頭で答えていたものを、朝一番でメールで流してずっとそれを使ってもらうとか、夕方に管理部門がやってきて、あるスクリーンのコピーをとってくる業務について、なぜ必要かをさんざん尋ねて、結局必要ないと言うことがわかったのでやめてもらうとか、そんなことをやり続けたのです。結果、仕事の量は正直、「3分の1」になりました。
ちょうど昨日、経済評論家の勝間和代さんが毎朝6時にお届けする「メールマガジン」にて、仕事の減らし方について綴っていました。勝間さんは生産性を上げるために、努力を惜しみません。それを物語るように、会社のやり方を変えさせて、仕事の量を「3分の1」にさせたそうですw
ここまでやるには、かなり根気が必要ですが、それほど仕事の量を減らすという考え方は大切だということです。多くの見識者たちは、もう既に高生産性社会を生きるべく、何年も前からこういう考え方で仕事に取り組んでいるのです。それは成功するわけです。
生産性が低すぎる販売員問題
服を買う顧客にとって価値あるアドバイスとは、「似合う服を似合うと言ってもらえ、似合わない服は似合わないと言ってもらえること」です。でも、そんなアドバイスをする店員はいません。彼らの仕事はすべての客に「よくお似合いですよー!」と叫ぶことです。
これは深刻です。僕も以前から販売員の生産性の低さは指摘し続けてきました。彼らは特にいいアドバイスをくれませんし、ゆっくり商品を見たい人の気持ちなんて考えずに持ち前のコミュニケーション力(笑)でガンガン営業トークをしてきます。
一方で、もうホントに「UNIQLO」と「ZOZOTOWN」には助かっています。リアル店舗に行っても、交通費と時間と販売員への気遣いで、心身共にヘトヘトになり、非常に生産性が低いなあといつも思います。世論は「UNIQLO」と「ZOZOTOWN」の業績は見れば一目瞭然ですね。
生産性の高い人と低い人の未来
生産性の高い人(図8の左側)は、これから現れるさまざまな「生産性を高くする技術やサービス」を利用し、多忙な生活を抜け出すことができます。一定以上、社会の生産性が高まれば、週休3日や週休4日制さえ可能になるかもしれません。一方、生産性の低い仕事を続けていく人(図8の右側)は、多忙な生活に追いまくられ続けます。そしてどこかの地点でキカイに置き換えられ、失職してしまうのです。
では、生産性が低い人はどのような未来が待っているのでしょうか?それは機械への置き換えです。いまはまだ機械の導入コストよりも人間の労働コストの方が安価なため、雇用が守られていますが、10年後はほとんどの人間が機械との競争に負けます。
機械との競争に負けた方は失職して、生活保護を受給することになるでしょうね。ベーシック・インカムは、アタマの固いおじさん達が日本を占めている以上、そうそう実現しそうにありませんので、生活保護の可能性大です。
よく生活保護受給者が批判されますが、彼らに当事者意識がないのは、未来が見えてないからなのです。現代社会に生きていれば、誰しもが生活保護受給者になる可能性は大いにあるのです。その方たちを、生産性の高い人が養うことになるでしょうね。
でもそれでいいのです。生産性の低い人に無理に仕事をさせても、余計にコストが掛かるだけなので、お金を支給してゆっくり消費活動に励んでもらっておいた方がいいわけです。働きたくない人にとっては素晴らしい未来ですね♪
さいごに「自分の時間を取り戻そう」
働き始めて30代になった頃、私も人並みに「自分はどんな人生を送りたいんだろう?」「なにを手に入れたいんだろう?」と迷い始めました。なかでも悩んだのは、当時の仕事をこのまま続けるべきか否か、ということです。(中略)
そうしたら2ヶ月後には「この仕事は私のやりたいこととは違う!」とはっきりわかってしまいました。そしてすぐに転職を決断できたのです。
最後に、あのちきりんさんが「1年以上も会社を辞められずに悩んでいた」という衝撃の過去が綴られています。正直、これを読むだけでも価値ある一冊でした。
ちりきんさんが転職を決断した方法論は、この本「自分の時間を取り戻そう」に全て書かれています。もし、あなたが忙しい現代人、悩みの多い現代人、特に今の仕事ややりたいことに悩んでいる方ならば、この本をとてもオススメします。人生を変えるくらいの威力をこの本は持っているからです。
そんじゃーね!