そんな異色の転職経験を持つ尾原和啓さんが、主に若者向けに書いたモチベーション本になります。そのなかでも印象に残った箇所を紹介したいと思います。
この記事を読むことで、楽しく幸せな仕事生活を送りましょう!
乾いている世代と乾けない世代
- 40代以上:乾いている世代
- 30代以下:乾けない世代
まず初めに本書では、戦後で何もなくあらゆる物事に飢えていた団塊の世代を「乾いている世代」、逆にそんな時代を知らない物や情報に溢れている30代以下の世代を「乾けない世代」と称し、世代間によるモチベーションの源泉の違いを書き記しています。
人の幸せは5種類
- 乾いている世代:達成、快楽
- 乾けない世代:良好な人間関係、意味合い、没頭
尾原さんは、ポジティブ心理学者の第一人者「マーティン・セリグマン」が唱えた人の幸せ5種類を紹介し、世代間による幸せの違いを大まかに上記の通り分けました。
もしあなたが今の仕事にモチベーションが湧かない「乾けない世代」ならば、それは世間体を意識した仕事に就いてしまい、自分が本当に好きで得意で没頭できる仕事ではない「ライフ」と「ワーク」がかけ離れているからだ、と指摘します。
インサイト(新しい視点)が重要視される時代
「仕事は辛いものだから、少しでも多く休んで私生活を充実させたい」と感じている人は、そもそも”ライフ(=余暇)”と”ワーク(仕事)”が切り離されているのです。(中略)「インサイト」が重要視され、仕事と遊びの境目があやふやとなった今では、なるべく仕事は「公私混同」で取り組んだ方が効果的です。
インサイトとは、近年マーケティング業界で注目されている言葉で、ユーザーの潜在的な欲求や購買意欲のツボである「(本人が気付いていない深層心理化にある)新しい視点」のことを指します。
尾原さんは、足りてないものを見つけるのが困難な現代では、このインサイト(新しい視点)が大切だと断言します。
「ワークライフバランス」から「ライフワークバランス」へ
このインサイトを身に付けるには、「外部からの刺激を増やすこと」が一番効率的で、残業なんてする時間あるならば、とにかく街中に出て消費者が何を欲しているか観察した方がいいと言います。
つまり、24時間全てずっと仕事しているようで遊んでいるというような「公私混同」が効率的で、そのためには「好きなことや得意なことを仕事にすること」がいいと仰っています。
好きなことや得意なことを仕事にする際の注意点
僕は、転職した先でいつも真っ先に地味な仕事から手をつけます。他の人の手が回らなくなって停止状態のプロジェクトを整理したり、誰もが嫌がる契約解除の手続きをしたりします。これらは、僕にとっても得意な作業ではありませんが、誰もがやりたがらない作業を率先してやることで、「いざとなったら、地味な作業もきちんとやってくれる」と周囲に信頼されるようになります。
ここが尾原さんの凄いところなのですが、好きな仕事をするには「信頼が全て」といい、周囲からの信頼を得てようやく好きなことや得意なことに専念する状況のスタートラインに立てるというわけですね。
人工知能にも代替不可能なもの「嗜好性」
日本の人工知能の権威、東大の松尾豊教授が、こんな話を聞いたそうです。「昔の資本は筋肉でした。肉体労働を集約できることが強かった。それが蒸気管の発明で追いやられて、今の資本は頭脳になった。そして頭脳は人工知能によって効率的な仕事に追いやられて、次の資本は非効率を産業としていく嗜好になっていくのです」。これを受けて教授は「自分が何を好むのかという情報はこれから価値になります」と語っています。
これからのAI時代では、ロボットに勝たなければなりません。では、そのロボットに勝つためには、代替されない仕事とは、価値とは、どのようなものでしょうか?それは「嗜好」だと言います。
この嗜好性は人工知能にはない「非効率」なもので、人間の熱量がこもったイレギュラーなものなので、人工知能には代替できません。この「嗜好」こそが、これからのAI時代において強みになるというのです。
そして、嗜好は嗜好でも、周りから見たらおかしいくらいの「偏愛」が最強です。それは人工知能に代替されないことはもちろんのこと、人と違うことを好き=競争倍率が低い=希少ということになり、価値が高いからです。
バリ島は生活費1万5000円で生きていける
バリ島は温暖で人々の気質も温かく、非常に住みやすいところです。実はバリ島は経済成長の途上なので、住民の平均月収も1万5000円ほどです。(中略)どうして、それで生活していけるのでしょうか。バリ島は温暖な気候で水に恵まれ、米を三期作で育てたりします。さらにバナナやヤシ、マンゴーがそこかしこに生えていて、にわとりは放し飼いにしていれば自然と成長してくれる。
現在、尾原さんはバリ島を拠点にオンラインで仕事されているそうなのですが、バリ島はベーシックインカムが整っている環境のようです。
日本でも、今後AIによってバリ島のようなあまり働かなくても生きていけるようになるのか?というと、あと10年経たなければ「まだわからない」と仰っています。
現代は4つの革命が起きている
- グローバル革命
- インターネット革命
- 人工知能革命
- 実世界指向革命
これは現代の魔術師の異名を持つ落合陽一さんが仰っていたことなのですが、上3つの革命は理解できます。実世界指向革命とは、電子書籍よりも紙の書籍の方がいいというアナログ指向のことですね。
このような変化の時代において、ここでも尾原さんは、自分の好きにお金を払ってくれる「偏愛・嗜好性」が強いと断言します。むしろ4つの革命によって、より好き同士の結びつきが強化されていくと言います。
Googleのモチベーションマネジメント
日本人は相手を信頼して任せることが下手で、ルールや罰則、人脈を固定化させて年功序列で集団主義的な閉鎖的な空間のなかで、半ば強制的(同調圧力)に安心社会を作ってきました。
しかし、これからの時代は安心(お互いの立場を脅かさないでね。私を裏切らないでね。)よりも信頼(完全に任せます。私は自分の得意分野に注力します。)が大切だといいます。
そこで尾原さんは、Google在籍時に感じた日本の組織には足りない素晴らしさを紹介します。
CEO ラリー・ページさんが重要視する「信頼」
「Googleは誰もが色んな情報に触れることでそれぞれがイノベーションを起こしていくサンクチュアリ(聖域)だ。秘密を漏らしてしまう人が続くと情報を隠さなければならなくなる。そうすると、みんなは限られた情報のなかからでしか新しいことができなくなる。それはGoogleを殺すことになる。だからGoogleらしくいるために、このサンクチュアリを守るため、信頼を大事にしてほしい」
Googleは信頼を大前提として、社員には驚くほどの情報を大公開しており、その情報を漏洩してしまう社員は瞬時にクビにしてしまいます。その際に伝えたメッセージが上記の文章になります。
この信頼こそがイノベーションを起こすと言います。
採用基準「グーグリネス」
Googleは、いかに無邪気に世界を変えようとしているか、それを仲間と行うプロセスを楽しめるか、上下関係を意識しない態度をとれるかどうか、を採用基準にするほど大切にしています。
それをグーグリネスと呼んでいるそうです。
クリエイティブなチームの特徴「心理的安全性」
「お互いの心遣い、配慮や共感」でした。これがない組織では、失敗すると恥をかくのではないか?と冒険をしなくなります。
生産性の高いチームに共通する要素をGoogleは長年の研究から突き詰めました。それが上記の内容です。
失敗してもみんなが受け止めてくれる空間のことを「心理的安全性」と言うのですが、これがクリエイティブにとって最も重要だと言うのです。
心理的安全性を見極める質問
「あなたのマネージャーはあなたのことを”人”として見てくれているか?」
「心理的安全性」において重要なことは、一人の人間として見られることなんだそうです。
そうすると、自分の個性・好きを発揮することができて、生産性の高い仕事ができるようになるというわけです。メンバー同士が、人として認め合い、違いを楽しめてこそ、心理的安全性が生まれるわけです。
30代以下の乾けない世代としては、これは自身の経験からも非常に納得のいく答えです。
失敗、ミスが許されないのが日本の組織に多いと思います。上司から失敗したら「殺すぞ」「いてまうぞ」と言われて萎縮して生産性が低下した自分としては、首がもげる程頷きました。
40代以上の「乾いている世代」はどうも鉄拳制裁、懲罰教育が好きな人が多いという印象が感じます。いまの若者はそのようなブラック企業には入らないようにしましょう▼
ご縁は「お金に換えない」
僕が普段から「ご縁」をつなぐときにお金をもらわず、純粋に楽しんでやっていることで「尾原からきた案件は、嘘がないから信用できる。だって、人と人の縁をつなぐことに関しては本当にピュアにやっているもんね」と言って信じて引き受けてくれるのです。
尾原さんはその経歴からみるに、非常に多様なネットワークをお持ちだと思うのですが、その紹介には一切お金などの金銭的な報酬は受けないようにしているそうです。
そうすることによって、信頼されて、結局のところ他の仕事の場面で信用されるというわけです。
これは本当に思います。よくブロガーの間でも、信頼を切り売りして、有料で高額な情報やオンラインサロンを運営している人がいますが、彼らはやはり炎上してしまい、信頼を失っている部分が見受けられます
一方で、お金を要求しない人は、結果的に信頼(お金)が貰えています。
強みを認識した機会
僕が最も価値を見出されたのは、会議などでの会話をリアルタイムでパソコンに打ち込み、議事録にする能力でした。今となっては珍しくもないことですが、当時はまだリアルタイムで議事録をとれる人が少なかったのです。
尾原さんが最初に自分の強みを認識したのは、とあるボランティア活動での会議だったようです。
そこから「自分が好きで得意なことで他人ができないこと」をひたすらやり続けていたら、活躍範囲が広がって、自分の価値がどんどん上がっていったといいます。
このような小さな機会で見出された自分の強みに対して、しっかり気付きを得たことで、それに自身のリソースを注力させて夢中・没頭し、誰もが求める高付加価値を持つことができたわけですね。
自分の強みを発見する方法
自分の強みがどんなものなのか、どんな場面で活かされるのかをより詳しく知りたい場合は購入をおすすめします。
尾原さんの時代にはなかったので、強みを自分で気付くしかなかったのですが、いまは「ストレングス・ファインダー」という強みを発見できる診断テストができる本があります。
上記の通り、尾原さんがオススメしている診断テストが受けられる書籍になりますが、これは本当にオススメです。
私も過去に受けて自身の強みを把握する上で非常に役に立ちました。気になる方は、詳細を下記の記事にまとめてありますので、ご一読ください▼
「他人に迷惑をかけてはいけません」という呪い
戦後、国をあげて経済成長していく時代になると、テレビは”持っている家に集まって観るもの”から、”一家に一台”に変化していきました。すべての家に家電が行き渡れば、ご近所同士のモノの貸し借りがなくなります。こうして、”迷惑をかけちゃいけない”という”呪い”が生まれてきました。
これは私も常々思っていたことなのですが、日本には「人様に迷惑をかけてはいけない」という呪いの言葉があります。 その呪いの影響で、失敗やミスに不寛容な社会が醸成されてしまったと指摘しています。
私も高畑裕太容疑者が逮捕されて、母親の高畑淳子さんの謝罪会見を視聴した際に「他人に迷惑をかけてはいけません、と育てました」と述べていたのをみて、息子さんはそういう教育の圧力が原因で、このような事態になってしまったのでは?と推測しました。
おわりに
まとめると、自分の興味関心が強い好きなことで、他人よりも秀でている分野が強みであり、それに自らのリソースを捧げること(24時間公私混同)がこれからの働き方だ、といった感じでしょうか。
非常によくまとめられていると思うので、働き方に悩んでいる人には非常にオススメできる内容でした▼
モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)
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